キスだけでは終われない
それから私たちは何度かデートに行った。
待ち合わせではなく彼が私の会社の近くまで迎えに来てくれるようになった。
修一さんは私よりずっと忙しい人なのに、と思うと申し訳なくなる。でも、人が多くいる場所での待ち合わせの方が嫌だと言うので来てもらうことにした。
今日も会社の近くにあるコインパーキングで待っている、とメッセージがあり向かっていた。
「高梨さん…」
「…?!…」
もうすぐ着きそうな所で後ろから声をかけられ、驚いて振り向いた。
「加藤さん。なんでここに?」
「いや…高梨さんがいつもと反対方向に歩いて行ったから、どうしたのかと思って…」
「…あ、ええっと…ちょっとこの先に用事があって…」
私が立ち止まっていると、一歩ずつ近づいてくる。
「あのさ…。俺……」
なにか言いにくそうな様子がいつもの仕事中の先輩と様子が違い戸惑っていたら、いつの間にか修一さんが横に立っていた。
「香苗さん。こちらは?」
「修一さん。あの、こちらは職場の先輩の加藤さんです」
「あの、後をつけたりして、すみませんでした。じゃ、じゃあ俺はこれで。高梨さん、また来週」
「あ、はい。お疲れ様でした」
加藤さんは急に方向転換して、去っていった。二人で停めてある車に向かい歩いていると、隣にいる修一さんが大きなため息を溢すのが見えた。
「ハァー」
ため息を吐き終わると、自身の髪を片手でかきあげていた。