キスだけでは終われない

結局その日はなんとなく気まずい空気が漂う中で夕飯を食べた。車で家まで送ってもらい、降りようとした時に、運転席から腕を伸ばしてきた修一さんに抱きしめられる。

「今日はごめん。自分でもこんなに嫉妬深いとは思ってなくて、香苗さんに厳しいこと言ってしまったよね」

「いえ、私も…自分の外見を変えた時に従姉から注意されていたのに、頭の中は追いついていなくて…変えられていなかったから…。今までと違うことをもっと考えるべきでした」
  
「いや。今のままの少し鈍感な可愛らしい香苗さんを好きになったんだから、あまり変わらなくていいんだ」

「………」

続く言葉が見つからなくて黙っていたら、額に温かい何かが触れた。修一さんからの慈しむようなキスだった。

「ごめんね…」そう言った修一さんは優しく抱きしめてくれた。しばらくして離れると明日の予定を聞かれた。

「明日もデートしよう。前に話していた水族館に行こう」

私が行きたいと言ったことを覚えていてくれたことが嬉しくて、声を弾ませてしまう。

「行きたいです。あ、でも…お忙しいんじゃ…」

「実は急な出張が入ってしまって、ヨーロッパに行かなくてはならなくなったんだ。日曜日に出発する。だからしばらく会えなくなる」

「やっぱりお忙しいんじゃないですか。日曜に出発で土曜にデートしてて大丈夫ですか?」

「行く前に香苗さんで充電したいと思ってるんだけど…いいかな?」

「私はいいですけど…」

「じゃあ決まりだ。それと夕方にお世話になった方の喜寿のお祝い会があってさ。それにも一緒に行ってほしい」

「私が一緒でいいものなんですか?」

「あぁ、パートナーとして出席してほしい」

「パートナー……わかりました」

明るい時間からのデートに少しワクワクした気持ちになった。
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