キスだけでは終われない
会場内に入ると壇上に先ほど話したご老人が立っていらした。実際にお会いし話した様子はとても若々しくて、喜寿ということが信じられないくらいだった。
私は修一さん以外の知り合いはいなくて、彼が仕事の関係者と挨拶を繰り返している横に静かに笑顔を添えて立っていた。
祖父に連れられて行ったパーティでも似たような状況であったのだけど、隣に立つ相手が変わるとやはり何かが違う。
彼に挨拶をしてくる人の中には娘を紹介してくる人がいる。その場合、父親には「どちらのお嬢さんですか?」と探られ、娘の方からは値踏みされているような視線か、または睨まれているのではないかという敵意のような視線を向けられた。
彼の年齢と立場を考えれば、当然なのだろう。そもそも私もそういう形で彼と知り合ったのだから。
「修一さん。いつもこんな感じなんですか?」
少し困惑気味の顔がこちらに向けられる。
「ごめんね。いつもって訳ではないんだけど…。今日は須藤本家の長男が出席するって話だから、娘を連れて参加している人が多いらしくてさ。彼が駄目なら僕でも…と言ったところなんだと思うよ」
「そうなんですね…」