キスだけでは終われない
「香苗さん、お待たせ」
私と隣に座っていたご老人が振り向くと修一さんは驚きつつ、腰を折り挨拶をした。
「あっ、須藤会長。本日はおめでとうございます。ご招待いただきましてありがとうございます。父が今海外に行っていますので、私が代理で参りました」
「おぉ、片山さんのご子息の…修一君だったか。彼女は君のお連れかな?」
「はい。彼女は高梨香苗さんと言いまして、お付き合いしている女性です。香苗さん、こちらは今日の主役、須藤柾由会長だよ」
改めて「付き合っている」と言われ、顔が熱くなる。
「素敵なお嬢さんだったので、つい声を掛けてしまったよ。是非孫のお嫁さんにしたいと考えていたんだが、修一君の彼女か…。そうか残念だったな」
「今日は柾樹はまだ着ていないんですか?」
私は修一さんから聞こえた『マサキ』という名前にドキッとした。そんな私の様子に気がつかない二人は会話を続けていく。
「あいつは日本に着くのが夕方らしくてな。遅れると言っていたよ」
「ギリギリまで仕事とは彼らしいですね。彼は今の仕事が落ち着いたら帰国ですか?ますます業績を上げているようだし、僕も見習わないとな」
「いやいや、君もお父上から頑張ってくれてると聞いているよ。今自分ができることをきちんとやる。まだ若いんだ、これからだよ」
きちんと腰を折って「はい。精進します」と修一さんが答えると、ニコリと微笑み「では失礼したね」と言って離れていった。
「あの方が今日の主役なんですか?素敵な方ですね」
「あぁ…それにすごい人だよ」
「さぁ。もう始まるようだから中に行こう」
私の前に出された修一さんの手を取り、立ち上がる。