冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
プロローグ その花嫁、身代わりで嫁ぎ国に乗り込む
それは、小国サンスティールから迎えた花嫁の輿入れ行進だ。

出国した神輿の馬車と使者達が戻ってきた。ラグウルフ王国の王都ベンゼレアは、大勢の国民が外に出て迎え眺めた。

「どんな美人が乗っているんだろうなぁ!」

「なんでも、第一王女はプラチナブロンドの美姫らしいぞ」

「お顔が見られたらいいのにな」

「ばっか、お顔を一番に拝見するのは第二王子殿下だ」

人々が注目するのは、護衛達に守られる行進の中央に、花のようにある王家の美しい白亜の馬車だ。

迎えられる花嫁のため、花を模した装飾品で飾り立てられている。護衛達の婚礼のための盛装も目立った。

そんな車内では――誰もが想像している〝美姫〟より華奢な少女が一人、重い豪華なドレスに埋もれるようにして縮こまっていた。

「……や、やばい。私、ちゃんと挨拶できるかな?」

国民の声にミリアは唇をぎゅーっとする。

挨拶の言葉も流れも、何十回と頭に叩き込んだ。ヴェールを被るので、顔がはっきりと見えないのも助かっている。

遠目なので身長も、たぶん……小さいとか違和感を抱かれないはず。

(で、でも……)

ミリアは、サンスティール王国にただ一人、とか言われている第一王女の特徴的な輝きを宿したアイスブルーの大きな瞳を、慄かせる。

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