冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
「姫様っ、私が代わりに結婚なんて無理ですー!」

わっと小声で悲鳴を口にする。

実のところ、この瞳を持った女性はサンスティール王国に〝二人〟いた。

『私に任せてください! 姫様の初恋は私が守ります! どうぞアーサー王子とお幸せに!』

先日の自分を張っ倒したい。

ミリアは、思い返し顔を手で覆った。あんなことを言ったものの、まさかこんなことになるなんて考えつかなかったわけで。

(……まさに自ら〝身代わり〟を提示したようなもの)

ミリアは、周りの者達も呆れていたのを思い出す。彼らは彼女と違って、なんとなく展開が見えたのかもしれない。

(うぅっ、だって仕方ないじゃん! 私にとって姫様は特別なお方なんだもん!)

実はミリアは、サンスティール王国の第一王女ではない。

そのお付きの侍女、ミリアである。

一番そばに置かれ〝護衛侍女〟という特別な役職名も拝命していた。これもまた、護衛騎士隊長たちもみんな呆れていたけれど。

「わ、私が姫様の義妹になったのも畏れ多いのに、王族として嫁ぐことになるとか……!」

徐々に王宮が近付いてくるせいで、彼女の不安と緊張はマックスに達しつつある。

来国した姫が、一番目ではなく、二番目だとバレてもどうにかなるようにという急きょの対策だ。

しかし、しかしだ……とミリアは思う。

(どうにか? どうにかならないんじゃない!?)

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