冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
カイたちが、仕事をしている手を止めてミリアを見てきた。ちょっと低テンションにうかがってくる。

「……あのさ、姫はそう力強く開口しないぜ」

「……また走って来たんだろうなぁとは思うけど、まぁ、それで気持ちが発散できてんならいいんだよ、うん」

書類を運んでいたカイが、別の騎士の机に置いて声をかける。

「いつもみたいにブラッシングに行ける様子には、ひとまずは安心したけどさ。殿下とのことだけど――」

「あれは、単に誤解の、事故です」

ミリアは、なんの、という説明を置かないまま腕を組んで力強く言い切った。

「語彙力からして混乱っぷりを感じるわ……」

「それでいて考えを放棄した感も強い……」

奥で書類作業にあたっていた騎士たちが、ひそひそと言った。

ミリアはきりりとした顔を崩さなかった。聞き流している彼女に対し、カイが困ったように頭をかく。

「うーん、何かあったんだろうなぁとは察するけど……まさかなぁとも思っているというか」

というわけで、神獣の子供のブラッシングが決行されることになった。



カイが護衛メンバーを指名し、ミリアを伴って仔犬型の神獣が保育されているいつもの小庭へと向かう。

今回頼まれたのは、中型サイズの神獣たちの毛づくろいだった。

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