サンタクロースの贈り物(クリスマス企画)
柾樹サイド 1

携帯が、鳴った。



ディスプレイを見ると、元教え子の脩一からだった。



「久しぶりだな、何かあったか?」



『梨香さんって、未だに“先生”って呼んでるんだ?』



「電話、切るぞ。」



まさか、それが本題じゃないだろ?



『さっき梨香さんと会った時に気づいたんだけど、尾行(つけ)られてるみたいだ。

蒼先生、心当たりある?』



何だって!?



「その尾行、脩一の腕力で何とかならないか?」



『悪いけど、俺…ガキ連れてるんっすよ。』



「そうか、それは済まなかった。」



『さっき公園で別れた、夕飯作るって言ってたから真っ直ぐ家に向かってると思う。』



「そうか、連絡ありがとう。」



脩一からの電話を切ると、僕は車を走らせた。



だけど、どれだけ探しても梨香は見つからなかった。



心当たりは…ありすぎた。



正妻の1人息子として生まれたものの、僕には父親の会社を継ぐ気はこれっぽっちもなかった。



ヴァイオリニストになっても良かったけれど、大学の時に興味を持った教師の道を選んだ。



愛しいと思った梨香と出会い、結婚しても…。



蒼家の跡取り問題は、解決したわけじゃないらしい。









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