サンタクロースの贈り物(クリスマス企画)
「何すんのよ、蒼(アオイ)っ!」
「アンジェ、笑いすぎ。」
アンジェの頭を叩いた柾樹(マサキ)さんが、涼しい顔をしながら言った。
アンジェがいると、家の中が賑やかになって楽しい。
「ってか、蒼だっていいとこのボンボンだったんでしょ?
何が楽しくてアパートに住んで、しがない教師なんてやってるのよ?」
「僕のことは、別に良いだろう?」
私は叔父に財産を持ち逃げされて落ちぶれてしまったけれど、柾樹さんの場合は…自分の家が嫌いで出て行ったということしか知らない。
昔のことは、一切話したがらないから。
「先生と一緒に行けないなら、時間をおいて2回行こうかな…。」
「梨香、それはセコイだろ…。」
私たちの会話を聞いたアンジェが、呆れたようにため息をついた。
「リコ、その『先生』っていうの、いい加減に何とかなんないの?」
だって、私の中では先生って呼ぶのが定着しちゃったんだもん。
今更、変えられない。
「何度言っても、梨香はトリ頭だから…な。」
柾樹さんが、ため息混じりに呟いた。
「…知ってる。」
あっ、アンジェまで…。
ヒドイな、2人共…。
そう思いながら、私は台所へ夕飯の支度をしに行った。