サンタクロースの贈り物(クリスマス企画)
「今日は、帰るよな?」
「もう1泊、しちゃダメ?」
「駄目。」
夕飯の後片付けをしていたら、柾樹さんとアンジェが言い合っていた。
「あのマンションに帰りたくないんだもん、ヤダ!」
「マスコミくらい、事務所の力借りてでも何とか対処しろよ。」
タレントをやってるからか、アンジェはマスコミに追いかけられてるみたい。
その世界のことは全く分からないけど、芸能人っていうのは大変なんだな…と思う。
「先生、もう一泊くらい…。」
「僕にも、都合がある。」
何かあった?なんて考えてみるけど、思いつかない。
「排卵日。」
確かに子供が欲しい私たちにとって大事な日だけど、アンジェが困ってるのに…。
「そんなことくらいで…。」
私の言葉も聞かずに、柾樹さんはアンジェに向かって話す。
「なぁ、アンジェ。
梨香はまだ20代だけど、僕はもう35だ。
僕が定年を迎えるまでには、子供には大学を出てもらいたいと思ってる。
そうなると、リミットまで3年を切ってる状態なんだよ。
頼むから、今日は帰ってくれ。」
アンジェが立ち上がり、玄関に向かった。
「あ、待って。」
私は慌ててアンジェを追いかける。
「困っているんでしょ?今日も泊まっていいよ。」
「大丈夫、何とかするわ。
じゃあ、またね。」
アンジェはそれだけ言うと、うちのアパートを後にした。
彼女はいくら困っていても、自分さえ我慢すればいい…って抱え込む。
もっと、頼ってくれても良いのに…。