サンタクロースの贈り物(クリスマス企画)

「今日は、帰るよな?」



「もう1泊、しちゃダメ?」



「駄目。」



夕飯の後片付けをしていたら、柾樹さんとアンジェが言い合っていた。



「あのマンションに帰りたくないんだもん、ヤダ!」



「マスコミくらい、事務所の力借りてでも何とか対処しろよ。」



タレントをやってるからか、アンジェはマスコミに追いかけられてるみたい。



その世界のことは全く分からないけど、芸能人っていうのは大変なんだな…と思う。



「先生、もう一泊くらい…。」



「僕にも、都合がある。」



何かあった?なんて考えてみるけど、思いつかない。



「排卵日。」



確かに子供が欲しい私たちにとって大事な日だけど、アンジェが困ってるのに…。



「そんなことくらいで…。」



私の言葉も聞かずに、柾樹さんはアンジェに向かって話す。



「なぁ、アンジェ。

梨香はまだ20代だけど、僕はもう35だ。

僕が定年を迎えるまでには、子供には大学を出てもらいたいと思ってる。

そうなると、リミットまで3年を切ってる状態なんだよ。

頼むから、今日は帰ってくれ。」




アンジェが立ち上がり、玄関に向かった。



「あ、待って。」



私は慌ててアンジェを追いかける。



「困っているんでしょ?今日も泊まっていいよ。」



「大丈夫、何とかするわ。

じゃあ、またね。」



アンジェはそれだけ言うと、うちのアパートを後にした。



彼女はいくら困っていても、自分さえ我慢すればいい…って抱え込む。



もっと、頼ってくれても良いのに…。









< 4 / 23 >

この作品をシェア

pagetop