天秤は愛に傾く ~牙を隠した弁護士は不器用女子を甘やかしたい~

「誠さん」

まだ状況が把握できてない素子をそのまま腕の中に閉じ込めた。

「ごめんね、心配掛けて」

素子は腕の中で首を振る。
そしてその背中に手を伸ばした。

一階ロビーを知らせる音がして、誠は素子を腕から解放した。
名残惜しそうに素子はなったが、すぐに素子の手を握って歩き出す。

「ちょうど良かった、婚約の話が公になって」

明るい声の誠に、素子は考えてみればあんな場所で公言されたことを今になって気付いた。

「本当に良いですか?私で」

ホテルを出て歩いていた誠が立ち止まり、横にいる素子を見る。

「そういう素子こそ僕で良いの?」
「それはもちろんです」

きっぱりと言った素子に、たまらず誠は抱きしめた。
外なのに抱きしめられ、素子は慌てて離れようとするがその力は強くなるだけ。

「俺はね、必要とあらば手段を選ばないよ」
「え?」
「だけどそれは素子が逃げなければの話。
さて、新居の引っ越し予定にクリスマスに、もう籍を入れる日だって決めてしまおうか」
「急にどうしたんですか?!」

ご機嫌な誠に素子は驚いていた。

「やっと公に出来て嬉しいんだよ。
これでどこでも素子を甘やかしてあげられる」
「いえ、会社や外は止めて下さい!
それに会社では公平に扱って貰わないと」
「じゃぁ、二人きりなら良いんだね?」

耳の側で低く甘い声で囁かれ、素子の耳は一瞬で赤くなった。
それが可愛くて愛しいと思ってしまう。

「素子」

頬に手が伸びて、するりと上を向かされる。
誠の瞳には、素子の恥ずかしそうな表情が映り込んでいる。

「所詮平等なんて無理なんだ。
天秤なんて愛する人の方に簡単に傾くさ」

笑みを含んだまなざしが素子に近づいてくる。
素子は外だと言うことも忘れ目を閉じた。

温かな唇は一度だけで離れ、そして誠はうっとりとしている素子の頬を撫でた。

「どうしたい?
素子の気持ちを教えて」

素子は頬を赤らめながら、

「まずは誠さんに休んで欲しいです」
「素子らしい。
じゃぁこのままどこかホテルを予約しようか」
「まだ勤務中です!」
「ん?早退にすれば良いでしょ。
たまにはそういうことくらいしても良いんじゃ無い?」

素子は目を丸くした後、口元を緩めた。

「たまには良いかもしれないですね」
「結局甘やかして貰ってるのは俺の方かも」

誠と素子はまたキスをすると、二人は笑って手を繋ぎ歩き出した。
外は寒いはずなのに、二人でいれば暖かい。
これからの二人を祝福するように、明るい日差しが二人を包み込んでいた。

                               END

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