冷徹上司の過剰な愛
『蓮美…?』



そう呼んだところを見れば、難波さんはもう会社にいるようだ。



「…難波さん?……あの、…今日お休み貰ってもいいですか?」


『休み?体調でも悪い?』



そう尋ねてきた難波さんの口調は柔らかくなり、少しすると周りの雑音が聞こえなくなった。



『あのん?体調悪いの?』


「……わたしは全然元気です。…実は母が倒れたって連絡があって、それでこれから病院に行こうと思って……っ、…難波さん………わたしっ、」



震える手と声。真っ白になる頭。



『…大丈夫。親御さんのそばにいてあげたらいい。きっと大丈夫だから。病院まで1人で行けるよね?』


「……はい。」


『こっちのことは心配しなくていいから。気をつけて行くように。わかった?』


「…はい。また連絡します。」



難波さんの優しい声が落ち着きを取り戻してくれ、電話を切る頃には気をしっかり持てていた。


その勢いのまま電車に乗り、病院まで向かった。



「お父さんっ、」


「…あのん。」



病室前まで行くとお父さんの姿が見えた。だけど、その姿を見た瞬間堪えていた涙が一気に溢れ、周りの目などお構いなく泣きまくる。
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