星空なら、うまく話せるのに
*紅茶店と珈琲店
チリンと小さな鈴音をさせ、ガラス張りのドアが開いた。
「莉子ちゃん、おはよー。2人なんだけど席、空いてる?」
「あ! いらっしゃいませ~。今日早いですね。今、窓際の席が空いたところなんです。奥へどうぞ」
「よかった~! ありがとう」
60代くらいの年配の女性が笑顔で席に着いた。午前10時前、小さな店内はすでにお客さんでいっぱいになっていた。
「今日のオススメは?」
「今日は私のブレンドハーブティーです。なんだか天気が崩れそうだから、頭痛に効いてリフレッシュできるように作ってみたんです」
私は壁いっぱいの大きな窓から空を指さし言った。
「それはアイスがオススメなの?」
「いえ、冷たくても、温かくても美味しく召し上がれるようになってます」
「じゃあそのハーブティーをアイスで。それとロイヤルミルクティーを1つ」
「はい。ありがとうございます」
「莉子ちゃんは、おばあちゃんそっくりになってきたね」
「えーそうですか?」
「よしえさんも、いつも天候やお客さんのことを考えてブレンドティーをオススメしてくれていたのよ」
「そうなんですね」
おばあちゃんが亡くなって3年、今もこうやっておばあちゃんを知った人が店に来てくれることに、私は嬉しくて微笑んだ。
ビルの2階にあるテーブル席が4つとカウンターの小さな紅茶専門店。ここは紅茶が好きだったおばあちゃんが経営していたお店だ。ママが成人して手が離れたのを機に、このお店をオープンしたって聞いたことがある。
観光立地でもあるこの街は、たくさんのお店が溢れていて、2階にある入りにくいうちの店でも、なかなか繁盛していた。