夫婦間不純ルール
避ける……? 確かに近頃の私は少しだけ岳紘さんと距離を取ってはいた、それも悪い意味で。どうしても頭の隅に残ったままの、あの時の奥野君の言動に少なからずも心乱されていて。
だけどそのことに岳紘さんが気付き、こうして問いかけてくるとは思ってもいなかった。今までだって何度も私が彼を避けても気にしてくれたことなど無かった、私はずっと夫に愛されていない妻だったのだから。
それなのに、どうして今……?
自分自身に後ろめたい気持ちがあるせいだろうか? 言葉に詰まる私を見つめる岳紘さんの目がいつもより厳しい、愛情はなくてもこんな私を責めるような視線を向けられたことなど初めてで。
「答え……られないのか? 雫」
「別に、避けてなんていないわ。貴方がそんな事を聞いてくるから驚いただけよ」
私に他の相手との恋愛を勧めたのは夫であるこの人だ、いまさら私が彼にどういう態度を取ろうと気にならない筈ではないのか。岳紘さんの考えていることが、全く分からない。
だからと言って、本当のことを話す気にはなれなかった。奥野君は今でも可愛い後輩に変わりない、どんなに大人の男性になっていても……特別な感情なんて決してありはしないのだから。もちろんこれから先、奥野君を私たちの『ルール』に巻き込むつもりも毛頭ない。
「そうか……なら良いんだ。すまない、変なことを言って」
そう言いながらも岳紘さんは納得したという顔はしていなかった、ただこれ以上の追求は諦めたという感じに見える。私もそれで良いと思った、私だって気になっても聞けないままのことが彼にはたくさんあるのだ。
夫婦間の隠し事が一つ増えた、ただそれだけなのに私の胸はギュウギュウと締め付けられるようだった。結婚前に思い描いていた理想の夫婦像とかけ離れていく現実が、酷く私を苦しめて……