幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない


貴晴さんはもともと、高校生の時に2年ほどシンガポールに留学していた。
私は中学校に上がる前で、いつも一緒に遊んでくれたお兄ちゃんが遠くに行ってしまうのが悲しかった。
貴晴さんは、何度も『行かないで』なんて子供らしく泣いた私を、『たまに帰ってくるよ。そしたら絶対、いちばんに一椛に会いに来るから』と言って笑った。

言葉通り、彼は何度か私に会いに来てくれた。
思春期の女子が友達と話すことといえば恋愛についてで、私が貴晴さんに会う時の胸の高鳴りが恋のせいなのだと自覚したのはその頃。
それまでは、“ハルくん”と呼んでいたけれど彼が留学から帰ってきた時には、急に彼が大人に見えて、子供っぽいと思われるのが嫌で、“貴晴さん”呼びに移行したのだ。

『一椛ももう大人だもんな』

大人ぶる私に、少し寂しそうに笑った貴晴さんは、私のことを妹のように可愛がってくれていた。

そんな彼が、シンガポールに発ってしばらくして、私は彼のお兄さん、晴臣さんから聞いたのだ。

『あいつ、向こうに好きな人いるんだと思う』
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