幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない

期待していいよ

ほんの赤ん坊だった子が、いつの間にかひとりの大人の女性になっていた。
ちょろちょろと俺の後をくっついて回っていたのが、気づいたら隣に並んでいた。

四宮一椛は、俺の幼馴染で、いちばん大切な人だ。それだけは、ずっと変わらない。

ただ、いつからだろう。
純情な彼女に対して、言葉では表しきれないほどの恋情を抱くようになったのは。

一椛の隣が俺のものではなくなる焦燥に、〝許嫁〟の立場を利用して彼女の人生を決めてしまうほど、己の欲求に抗えなくなったのは。


一椛の元気がない、と思う。
本人はあくまで明るくいつも通りに振舞っているのだが、ふとした時に、沈んだ顔を見せることが多い。

会社でも家でも、俺は一椛のことが気になって仕方ないのだ。

彼女の元気がない理由は、正直わからない。
こういうところが駄目なのだ。女心が分からない、とはよく言われる。

学生時代、人並みに恋愛をしてきた俺だが、振られ文句はたいていそれだ。