幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
俺はどうにも、女性の気持ちを汲み取るのが下手らしい。

困った。どうしたら一椛の笑顔を取り戻せるだろう。

美味しいものを食べに出かけようか。いや、それでは食べ物で釣っているようなものではないか?
ピクニック…の季節ではない。
果ては動物園か水族館、映画。クリスマスから正月あたりに旅行に行くのもいいかもしれない。

デートに、プレゼント…。

プレゼントは、用意してある。
つい先日ドレスを贈ったが、その時ジュエリーショップにも立ち寄ったのだ。リングを眺める一椛の横顔が、どこか寂しげだったのを見て、気がついた。

結婚指輪というものを、渡していない。
それどころか、きちんとプロポーズもしていない。
これは如何なものか。由々しき事態だ。一椛と結婚し、一緒に暮らし始めたことで満足しかけていたのだ。
彼女の心が俺のところにあるわけではないのに。

俺は決めた。デート、旅行、プロポーズ。改めて気持ちを伝えるのだ。『俺にはおまえだけだ』と。
だいぶ順番を違えているが、過ぎてしまったことは仕方あるまい。

…こういう考え方も、女性には理解しえないのかもしれないが…。
< 53 / 126 >

この作品をシェア

pagetop