幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
彼からテレビ通話がかかってきたのは、翌々日のことだった。
お互い忙しくしていたので、メッセージのやり取りはしていたものの、声を聞いていないし顔も見ていない時間が、ふいに胸を襲う。

通話ボタンをタップすると、貴晴さんが眠そうな顔をしている。

『一椛! おはよう』

時差が1時間なのが救いだ。
これでこっちが夜でむこうが朝、なんてことだったら、電話さえも難しい。

「おはよう。 疲れてない? 無理しないで、休める時はちゃんと休んでね」

『ありがとう。でも一椛の声聞いたら元気出た。 素晴らしい世の中になったよな。テレビ電話を開発した人、天才』

貴晴さんが感慨深いというように言うので、私はくすくす笑った。

『そっちは大丈夫か?』

「うん。貴晴さんがいなくても、うちの会社はしっかり機能してる」

『一椛は? 寂しくないか?』

聞いている方が寂しさ満載の声をしている。

「寂しい。 この家広いんだもん。帰っても誰もいないし、誰も帰ってこない。ひとりでいると、会いたいなぁって思う」

恥ずかしい。何言ってるんだろ、私。

『おまえ、なんで5000kmも離れてる時に素直になるんだよ……』

たぶん、離れてるから、だと思う。
近くで、体温を感じると、思うように言葉が出てこない。
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