幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
「何かあった時に本社の力がないと成り立たないような会社は作っていないが、状況を把握したい。俺がシンガポールに行くことにした」
「分かってる。 気をつけて行ってきてね」
「一椛… 帰ったら、旅行に行こう。おまえの誕生日までには戻る」
貴晴さんが眉をひそめて言う。
私は苦笑を浮かべた。
「楽しみにしてるね。 もう、なんでそんな顔するの。何年も離れ離れになるわけじゃないでしょう?」
「電話する。テレビ電話」
「はいはい、分かったから。 仕事、行くよ!」
今生の別れみたいなスケールで悲しむ貴晴さんは、ブライア社長の一報の翌日、シンガポールへと発った。
寂しくないと言ったら嘘に決まってる。
私の誕生日は、来月の末だ。
今はお正月が明けたばかり。
それまでに戻る、ということは、短くても一ヶ月半は向こうにいるのだろう。
けれど、貴晴さんのことばかり考えている暇はない。
何しろ急なことで、こちらも暇なわけがないのだ。彼の穴を損害にしないように努めるのが私の仕事でもある。