すずらんに幸あれ!

***


「おい、弁当リビングの机に置いたままだぞ」

「……」


次の日の朝。
身支度を終え、玄関に向かおうとすると、後ろから突然すずくんが話しかけてきた。


「おい、聞いてんのか?」

「……」


名前ではなく、「おい」という呼び方にムッとして、すずくんを睨む。

そそくさとお弁当を取りに行き、鞄の中に押し込んでから玄関に戻った。


「? おい……」

「……お弁当、教えてくれてありがとう」


ローファーを履いて、私は勢いよく振り返る。


「私、『おい』って名前じゃないから!『蘭』って名前だから!!すずくんが名前で呼んでくれるまで、私もすずくんみたいに無視するもんねっ!!」


「すずくんのばーか!」と言って、すずくんを置き去りにしたまま家を出た。

< 56 / 69 >

この作品をシェア

pagetop