すずらんに幸あれ!

「蘭殿〜!」


駅に向かいながら考え事をしていると、背後から聞き覚えのある声がした。

振り返ると、ふくよかな体型に分厚いレンズが入ったメガネをかけている男性がもったもった…と手を振って走っているのが見える。

この間、合コンで友達になった秋山さんだ。


「秋山氏、こんにちは」


秋山さんとは、SNSを相互フォローしているため、時々DMでやり取りする仲になった。

ちなみに、秋山さん本人から「『秋山さん』はアンナちゃんにだけ呼ばれたいので、蘭殿にはぜひ『秋山氏』とお呼びくだされ…」と言っていたので気軽に「秋山氏」と呼ばせてもらっている。

ふと、秋山さんの手元に視線を移すと、着せ替え人形玩具サイズの三日月アンナさんと目が合った。


「秋山氏、この方はもしや…」

「あっ、そ、そうでござる!拙者の彼女のアンナちゃんでござる!」

「わ〜っ!可愛らしい方ですね!」


私は屈んでアンナさんの目線に合わせて「こんにちは!」と挨拶をする。

当然、人形なので返事は返ってこない。

< 58 / 69 >

この作品をシェア

pagetop