まあ、食ってしまいたいくらいには。
好きになって



蒸し蒸しする季節も終わりに近づき、もうすぐそこまで秋が迫っていた。

運動の秋、芸術の秋、食欲の秋。


わたしは購買で勝ち取った数量限定のバスクチーズケーキを生徒会に持ち込んだ。

芽野くんも気になっているみたいだったので、あーんと食べさせてあげようとしたとき。


後ろから思いっきり頭をはたかれた。



「いたーっ!やめてくださいよテスト近いのに!」


振り返って、そこに立っていた奈良町先輩を睨みつける。




「うぜ」

「いやうぜーのはこっちですけど?!」



邪魔してたわけでもなければ、騒いでたわけでもない。

それに芽野くんだって言ってくれたもん。


フォークにもそれぞれ食べられるものがあるって奈良町先輩から教えてもらったあと、帰省していた芽野くんが帰ってきてすぐ謝りにいったんだ。

そしたら、めずらしく噴き出すように笑われて。



『元々、何を食べたらいいのかわからなかったんだ』


──わたしと一緒に食べることが楽しみになっていた、って。



嘘じゃないってすぐにわかった。

芽野くんはそんな人じゃないから。

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