まあ、食ってしまいたいくらいには。


結局、彼女の一人称は無難に"私"で落ち着いた。

私、私と何度も練習している彼女に声をかける。



「んー?」


「僕と一緒にいること、後悔しない?」



なにを聞かれたのかわからなかったのか。

さっきよりもゆっくりと瞬きをした彼女は。


急にどっと噴き出してお腹を抱えた。




「ちょっと、こっちは真面目に……」


「しないよぉ。そんなの、するわけないじゃん!」



よほどおかしな質問だったのか、彼女はしばらく笑い転げて。


それから
ようやく落ち着いたように涙を拭きながら、言った。




「後悔なんてしないよ。いままでも、これからも。絶対。だって」

「……だって?」

「わたしはあなたのいちばんの親友で、あなたはわたしのいちばんの親友だもん!」



舌っ足らずな彼女が言うと"わたし"に聞こえる。


ほっとした僕の顔がツボに入ったのか、彼女はまた笑い出した。


いまにもブランコからひっくり返りそうな勢いで。





「これからもずーっと一緒だよ!」



顔をくしゃくしゃにした彼女の笑い声が、雲一つない青空に広がっていく。




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