まあ、食ってしまいたいくらいには。


あわてて的のほうを確認すると、それは予想に反してちゃんと的に中っていた。




「ごめんね、びっくりさせちゃったよね」



弓道場のほうを振り返れば、草履のようなものを履いた敬郷先輩がこちらに歩いてきているところだった。



「やー恥ずかしいところを見せてしまったな」

「え、でも、ちゃんと的にあたってますよ」

「いや、あれは音からして外してると思う」


すると真ん中に集中している矢をひょいひょいと手際よく抜いて、なぜか一本の矢だけを残した的ごと、持ってきてくれた。


あ、それ動かしてもいいんだ……!?


ほら、とフェンス越しに見せてくれた的。

その的のかぎりなく端のほうに矢が刺さって、木枠の外に矢の先が飛び出している。



「この矢尻が的枠の中にあればオッケーなんだけどね」


なかなか抜けないんだよなぁこれが、と苦笑する敬郷先輩。




「へええ……なかなかシビアな世界なんですね」

「あはは、そうだね。桃ちゃんの言うとおりだ」



的外れな発言に、敬郷先輩がおかしそうに笑った。

かああ、と顔が熱くなるのを感じる。



「そ、それでもすごかったです。ほとんど真ん中にあたってたし、弓道の知識がないわたしでもわかるほど、先輩の動作は丁寧で……あの、い、せ?急いでは……」

「急いては事をし損じる?」

「で、です。それです」


弓道以外の知識もなくて恥ずかしい限りである。



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