丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
紀信父「━━━━━━━どうゆうことだ!?紀信」

なんとか落ち着きを取り戻した紀信。
ダイニングに向かうと、父親に怒鳴られた。

紀信「………」

紀信父「名原さんのことを、突き飛ばしたんだって!!?」

紀信「………うん…」

紀信父「お前、何てことを……」

紀信「改めて、謝罪に行きます」

紀信父「当たり前だ」

紀信「━━━━━でも、父さん」

紀信父「何だ」

紀信「もう二度と、見合いはしません。
自分のことは、自分で決めます」

紀信は、父親を真っ直ぐ見て言い放った。



後日紀信は、知里の家の前にいた。
知里も実家暮らしで、母親が応対してきた。

紀信「この度は、知里さんを傷つけてしまい申し訳ありませんでした」
丁寧に頭を下げる。

知里母「……いえ…」

紀信「知里さんにも、謝罪したいのですが……」

知里母「えぇ…」

リビングで待っていると、知里が現れた。

“二人だけで話したい”と知里が言い、リビングに紀信と知里が向かい合っていた。

紀信「本当に、ごめんなさい!」
知里「いいんです。
元は、私があんなことしたからだし」

紀信「………」

知里「あの…」

紀信「はい」

知里「お店の前で会った女性…」

紀信「え?」

知里「“忘れられない想い人”って、あの人のことですよね?」

紀信「え?あ…はい、そうです」

知里「やっぱり…
どんな方なんですか?」

紀信「え?
可愛い人です。
優しくて、穏やかでお人好しだけど、柔らかくて、癒される。
小学生の時に初めて見たときから、虜になってました。
一目惚れって、こんな感じかなって。
中学卒業までずっと一緒に過ごして、日に日に気持ちは膨らんでいったけど、僕には医師になる夢があったから、離ればなれになった。
その間も、彼女のことを忘れたことがない。
10年振りに会ってもやっぱり変わってなくて、益々気持ちが膨らんで………
でも、親友の婚約者になってました……
……………それでも、忘れられないんです」

知里「そう…ですか……
そんなに、あの人のことを想ってるんだ」

紀信「ごめんなさい」

知里「でも、叶わないんですよね?」

紀信「そうですね。彼女今は、親友の奥さんなので」

知里「………」

二人の間に、重い空気が流れていた。
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