丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
お前のその思いやりは“ありがた迷惑”だと言うことを忘れるなよ?━━━━━━


住江の頭の中に、凱吾の言葉が蘇った。
凱吾の言葉の意味が、わかった気がした。

住江「そうか…」

佐木「住江さん?」

住江「いえ」

佐木「……………でも、ありがとうございます」

住江「え?」

佐木「心配してくれたんですよね?私のこと」

住江「え?」

佐木「凱吾様が、突然“お前に休みをやる”なんて言い出したので、不思議に思ってたんです。
今日住江さんとお話して、わかりました。
住江さんが言ってくれたんですよね?
私を“休ませてほしい”と」

住江「あ…知ってたんですか?」

佐木「なんとなく、そんな気がしてました」

住江「そうだったんだ…(笑)」

佐木「そんな風に心配してくれたこと、とても感謝してますよ!
ありがとうございます!」

住江「………じゃあ…一つ、いいですか?」

佐木「はい」


住江「()と二人の時は、敬語や畏まるのやめません?」

佐木「え?」

住江「佐木さんは俺よりも年上だし、てゆうか…俺は佐木さんの主人じゃないし」

佐木「………わかった」

住江「良かった!」
佐木の返事に、嬉しそうに笑う。

佐木「フフ…やっぱ、女の子みたいだ(笑)」

住江「は?」

佐木「住江さんは、恋人は?」

住江「いないよ」

佐木「へぇー、きっとモテるだろうなと思ったから」

住江「そんなことないよ。
佐木さんの方が、モテそうだし!」

佐木「そんなことないぞ。
一番欲しい人を、手に入れられなかったから」

住江「鈴嶺様のこと?」

佐木「あぁ。
俺は……凱吾様より先にお嬢様と出逢って、お嬢様を守ってきた。
でも、あっという間に凱吾様に取られたんだ。
お嬢様が“凱くんとお付き合いすることになったの~”って言ってきた時の絶望感は、今でも忘れられない」

住江「………」
佐木「………」

住江「…………確かに、不思議だなぁー」

佐木「え?」

住江「鈴嶺様は、凱吾様のどこに惚れたんだろう」

佐木「わからないらしい」

住江「わかんないの?」

佐木「とにかく、好きなんだって言ってた。
ドキドキして、離れたくなくて、とにかく好きって感情しか働かないって言ってた。
恋愛は、理屈じゃないだろ?
俺も理屈は関係なく、お嬢様を愛しいと思うから」

住江「確かに……!」


住江は、酒を飲みながら“佐木さんは一生、鈴嶺様に囚われ続けるんだろうなぁ(笑)”と思うのだった。
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