【完結】王子として育てられた私は、隣国の王子様に女だとバレてなぜか溺愛されています

第11話 両国友好の儀(2)

 いよいよルーディアム国とトラウド国の友好の儀が執り行われることとなり、民衆は皆それぞれの国から会場に集っていた。
 両国は隣国であり友好的な関係であったために、国民同士の交流や文化交流などは盛んにおこなわれている。
 会場にはルーディアム国王ノエルと王子であるリオをはじめ、トラウド国王やフィル王子もいた。

(あ、いる)

 リオは自分の向かいのほうに座っているフィルを見つけると、ドキリと胸を高鳴らせたと同時に先日言われた言葉を思い出す。


『お前が好きなんだ』


 その言葉は友好の儀の準備の忙しさで忘れていたリオのときめきを思い出させた。

「リオ、どうした。顔を赤くして、熱でもあるのか?」

 一見聞くとそれは国王が息子を気にかけるように見えるが、実際はノエルの並々ならぬリオへの心配する親心が溢れていた。
 「少し緊張しているだけでございます」とリオはノエルに返答すると、一つ息を吐き出して自分を落ち着かせた。



◇◆◇



 式典はつつがなく執り行われ、フィナーレのルーディアム国王とトラウド国の二国王演説が始まった。

「この度はトラウド国、そして我が国ルーディアム国の友好の儀を執り行うことができ、素晴らしい日となった。改めて協力いただいた皆様には厚くお礼申し上げる」

 ルーディアム国の挨拶である胸に両手をかざしてお辞儀をした。
 そしてトラウド国王はノエルの挨拶を終えたのを見ると、ゆっくりと語り始める。

「このような素晴らしい式典の準備を共におこなってくださったルーディアム国の皆様、ありがとうございます。この式典の指揮を執ったのはリオ王子と伺いました。さすがの力量でございます」

 その言葉にリオは軽くトラウド国王に向かって礼をする。

「しかし、この中で嘘を吐いて欺こうとする野蛮な者たちが紛れ込んでおります」

 トラウド国王の演説に両国の民衆たちはざわざわとしはじめ、あらかじめ聞いていた内容とも違うことでノエルとリオも戸惑いの表情を浮かべる。
 わざとらしくマントをはためかせてトラウド国王は民衆に訴えかけるように一歩前に出て叫ぶ。

「このルーディアム国王ノエル、そしてリオ王子は民衆に嘘をついている。この国の王族は女しか生まれない呪いにかけられているのだっ! つまり、この二人は王でも王子でもない!! ただの二人の女たちだ!!!」

 その言葉に民衆はいよいよざわめきたち、声をあげるものも出てきた。
 にたりと笑いながらトラウド国王は演説を続ける。

「ルーディアム国王たちは極僅かな人間しか入れない『サンクチュアリ』なるものに引きこもり、そこで財を消費して贅沢三昧の日々っ! 王妃もただの用意された侍女であり、本当の婚姻ではなくノエルの伴侶は男だ!」

 その演説を聞き、ノエルとリオは足が震えて目を見開き、顔の色を失っていく。

「まずいっ!」
「フィル王子っ!」

 フィルは父親に演説を止めさせようと通路を走り、舞台の方へと走り寄る。

「間にあってくれっ!」

 フィルの願いも虚しく、民衆たちは口々に声を挙げ始めた。

「俺たちをだましていたのか?!」
「ルーディアム国ってこんなにイカれた街だったのか!」
「嘘つきっ!」
「女だなんて聞いてないっ! 私たちを搾取して好き放題してたっていうの?!」

 民衆の不満の声はどんどん膨らみ、そしてやがてそれを煽るようにトラウド国王は叫ぶ。

「さぁっ! 民衆よ、今こそ声をあげよっ! ルーディアム国ノエル、リオを許してはならないっ!!」

 トラウド国王の煽りに民衆は一気に熱をあげ、会場中が暴動化する。
 民衆は観客席の枠を飛び越え、人の波となって舞台上へと押し寄せた。

「国王っ! 逃げてくださいっ!!」
「リオっ! 逃げるのです!!」

 ほぼ同じ時に叫ばれた声と共に伸ばされた母娘の手は、民衆なだれに巻き込まれて繋がることはなかった──
< 11 / 13 >

この作品をシェア

pagetop