【完結】王子として育てられた私は、隣国の王子様に女だとバレてなぜか溺愛されています

第3話 不思議な関係

「毎日俺に会いに来い」

 その言葉にリオは思わず顔を赤くして唇をかみしめる。
 リオの様子を見たフィルはくすっと笑ってリオから離れた。

「その反応、他の男の前でするなよ?」
「ほえ?」
「その間抜けな顔もやめろ」

 リオのほうへと再度振り向くと、彼女の両のほっぺをぷにーっと引っ張って諫める。

「ほへほほへほほ!」
「なんて言ってるかわからん」
「ぷはっ! もうフィル王子やめてください、おもちゃじゃないんですから!」
「ふふ、おもちゃね、確かにそれもいいな」
「だからやめてくださいって!」

 フィルはリオの言葉に半分ほど耳を貸しながらくすっと笑って窓際の椅子に座る。
 あくびを一つしたあと、机の上にある分厚い本を開くと静かに読み始めた。

 リオは胸の高鳴りがいまだに収まらず、その場から動けずにいる。
 だがふと我に返ると、フィルに反論するように食って掛かった。

「言われなくても秘密が守られてるのか気になるので毎日でも来ます!」
「そうか」

(もう~! なんでさっきあんなこと言ってしれっとしてるの~!!!?)

 そんなことを考えながら、フィルを監視するように目の前にどんと座る。

「……」
「……」

「……」
「……」

「読みづらい、あっちいけ」
「なっ! 会いに来いって言っといてその対応はどうなのですか?!」
「うるさい」
「王子とは甘やかされて育ったのですね、今日はこれで帰ります! お邪魔しました!!!」

 嫌味を言うような強い口調でリオはフィルに告げると、部屋を出る際も扉をガンッと強く締める。


「はあ……もっとおしとやかにできないのか」

 フィルの呟きは誰にも聞かれることなく消えていった。



◇◆◇



 自国であるルーディアム国の宮殿に戻ると、サンクチュアリにあるソファに王子服を投げる。

「ああ! もう疲れました! 王子というのはなんて礼儀の知らない方なんでしょうか」
「まあ~キャロル! おかえりなさい。もしかしてまた隣国のトラウド国に行っていたの?」
「ええ、今日は第一王子のフィル王子に会いましたが、それはもう失礼なお方でした!」
「ふふ」

 ノエルは口元に手を当てて、上品に笑う。

「何がおかしいのですか、母上」
「ううん、なんだかキャロルちゃんがそこまで感情的になったのっていつぶりかしらって」

(確かにそうだ……いつぶりだろうか、もう何年も王子を演じることに夢中で感情を殺していた気がする)

「きっと良いお友達になりそうね」
「よしてください、友達にはなれません」
「え?! まさか、恋人になっちゃったの?!!!」
「違います!!!」

 顔を赤くして子供っぽく否定するリオと、楽しそうにからかう母親ノエル。
 しばらく親子の談話は続いた。



 リオとの談話を終えて自室に戻ったノエルは執務室の机の引き出しから一通の手紙を出していた。
 それを神妙な面持ちで見つめて呟く。

「これだけは守らないといけない」

 誰もいない部屋に静かにノエルの声が響いた──
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