本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「二階堂様。ご来店いただきましてありがとうございます」
「こちらこそ。急な連絡だったのに席を用意してくださってありがとうございます。久し振りなのでとても楽しみにしています」
「恐縮です」
ここ、【鮨善】は改装や移転を重ねながらも五代も続く老舗の高級寿司店だ。
今の大将が五代目で、その子息が六代目として今お店で修行しているそうだ。
「茅野様もお久し振りですね」
「はい。大変ご無沙汰しております」
「大きくなられて。ご両親はお変わり無いですか?」
「はい。変わらず元気です」
「それは良かった」
お店の場所が近いこともあり、昔からよく知っていてこのお店にも家族で来たことがあった。
「和音さんも来たことがあるのですか?」
「うん。昔ね。二十歳の誕生日あたりだったかなあ。親父が祝いだって言って連れてきてくれてね。ここで初めて酒飲んだんだ」
「そうだったんですか。じゃあ思い出のお店ですね」
和音は事前に予約の際に注文まで終えていたようで。何も言っていないのにお寿司が出てきた。
白身から順番に出されるお寿司を食べると、魚の旨味が口の中に広がってとても美味しい。
久し振りに食べた【鮨善】のお寿司に目を細めた。
「美味しいです」
「うん。ここも変わらない味だ。美味い」
「ありがとうございます」
日本酒を少しだけいただきながら腹八分目まで食べ終えると和音はスマートに会計をして。
「行こうか」
「……すみません。払っていただいて」
「気にしないで。急に誘ったの俺だし。お礼だって言ったでしょ」
「ありがとうございます。ご馳走様です」
お店を出ると、夜風が頬を撫でて気持ち良い。
程良く酔いの回った身体を良い具合に冷ましてくれる。