本気で"欲しい"と思った。〜一途なエリートドクターに見染められました〜
「だから、お兄ちゃんって実は結構冷めてるの」
「そう、なの?」
「うん。どうせ幻滅されるからって。どうせ嫌われるからって。最初から恋愛も諦めてた。だから珍しいの。お兄ちゃんが由麻にキスしたっていうのも。それで嫌われそうであんなに悩んでる姿も」
面白そうに笑う愛美に、由麻は何も言えない。
愛美が何を言いたいのかがわからなくて首を傾げた。
「──ね、お兄ちゃん?」
唐突の言葉に由麻は驚いてきょろきょろと辺りを見回す。
愛美がドアの方を向くため、その視線の先を追うとほんの少しだけ開いたドア。それがゆっくりと開いて、和音が気まずそうに立っていた。
和音はいつからそこにいたのか。そして愛美はいつから知っていたのか。和音はどこから聞いていたのか。もしや全部聞いていたのではないか。
由麻は思考が追いつかないままどうしていいかわからずに固まった。
そんな由麻に一歩ずつ近付く和音は、由麻の目の前まで来るとその場でバッと頭を下げた。
「……由麻ちゃん、本当にごめん!」
「……え」
「酔ったら歯止めが効かなかっただなんて言い訳に過ぎないけど、由麻ちゃんを驚かせて傷付けたよね。本当にごめん」
「……」
「嫌われてもおかしくないことしたって、わかってる」
懺悔のように言葉を連ねる和音に、由麻はそっと「……顔を上げてください」と答えた。
ゆっくりと顔を上げた和音。その顔は由麻と同じようにほとんど眠れていないのだろう。酷い顔をしていて。
目の下のクマがくっきりと出ていてそれはそれは痛々しかった。