虹色のバラが咲く場所は

242話 体育倉庫


今日から新学期。
そして結果発表の日。
正午に日向さんの除く6人が
発表する。

「今日だね。予選結果見なかったけど
本当に良かったの?あれ、8月の頭には予選結果見れたのに」

僕の問いかけに舞は苦笑した。
「あー、予選結果見て突破してなかったら現実を知っちゃうから。
この結果で落ちたとしても予選は突破
したんだって自己暗示できるでしょ」
「なるほど」

舞と別れて教室に入る。
「おはよう」
「おはよう、茉里さん」
席替えをして離れても茉里さんは
変わらず挨拶してくれる。

それを面白くないと思うクラスメイトがいることは薄々気づいてた。
でも命に関わることをしてくるなんて思っていなかった。

授業中でも休み時間でも蝉は鳴き
うんざりする。
3時間目は体育館でバスケをした。
足元の小窓や引き戸を開けても、
湿気が籠りとにかく暑かった。
教室に戻る時にクラスメイトから
話しかけてきた。

「雪希、昼休みちょっと体育倉庫に来てくれる?」
「え、わかった」
その男子はすぐに追い抜いていつもいる友達のところに混ざった。

昼休み、すぐに終わると思ってスマホも
鞄に入れたまま体育倉庫へ。
「暑いな」

まだまだ残暑が厳しく、少し涼しい
ところから離れたら体が汗で
ベタベタする。

(でもなんで体育倉庫に。
嫌な予感がする。
でも本当に用事があったら
後がめんどそう。
早く、指導室でみんなと結果みたいな)

両開きの体育倉庫の引き戸の片方だけ
開けて中に入るとまだ来てなかった。
(呼んでおいてって思うのはわがまま
すぎるよね)

静かにパタンと音がした。
駆け寄って開けようとしたが向こうは
抵抗してすぐにガチャッと絶望の音がした。

「・・・え、」
頭が真っ白で思考が止まる。
「今の音、なに?」
振り向くとタオルを持った茉里さんが。

「茉里さん、なんでここに」
「体育の時にこのタオル忘れちゃって。
今取りに来たの」
「そうなんだ」
生半可な返事に眉を顰める。

「どうかしたの、私、先戻るね」
通り過ぎる彼女。
「閉まってるよ」
「え?」

すぐに引手を開けようとしたが
ガタガタとなるだけだった。
「なんで、・・・あ、さっきの
音とその前にうるさかったのって」
僕を見るが、無言で肯定だと受け取った
彼女は天を仰いだ。

(少女漫画でお決まりの展開だけど
これは笑えない)

「忘れ物、取りに来ただけなのに。
そういえばなんで雪希くんはここに
いるの?」

「クラスメイトに昼休みここに来てって言われて」
「まんまと策略にハマっちゃったんだ」
「一応、警戒はしてたんだけどね」

茉里さんは、8段重ねの跳び箱の上に
座る。他の段は隣の第2倉庫に置いて
ある。

「そういえば、茉里さんなんで第2の方
にいたの?」
「友達の春香とちょっとね」
「ふーん」

窓なんてない密室。
こんなところにいたら5分もしないで
熱中症になる。

(他のクラスが5時間目体育で
尚且つその前に倉庫の鍵を開けて
くれたらな)

首筋に汗が流れる。
シャツに染み込み濡れて気持ち悪い。
手の甲で拭い髪を解いて、
低めのお団子にする。

お互い口呼吸は荒くなり顔が火照る。
跳び箱を降りて僕の近くに座る。
「万が一、気を失ったら危ないからさ」
タオルで顔や首をずっと拭いている。

(まずい、頭痛くなってきた。
茉里さんもこっちに来る時、
フラついてたし)

「雪希くん、ごめん」
「え、」
独り言のような小さな声の後、
僕にもたれかかる。
「茉里さん?」
頬を触るととても熱かった。















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