虹色のバラが咲く場所は

25話 残酷


夕食は冷やし中華。
「そうだ、そういえばチーム名って
どうするんです?」
「え、事務所で決めるんじゃないんですか」
涼太さんの声に類は箸を止める。
「他はわからないけど、俺たちは自分で決めたよ、」
「って言ってもデビュー直前だったけど」
涼太さんに続き翔も答える。
「そうですか」
類はそれだけを答えて何か考えているようだ

食事が終わり、入浴後、
スマホでベランダに
とある人から呼び出された。
「どうしたんですか、優斗さん」

「急に呼び出してごめんね」
「いえ、大丈夫です」
「単刀直入に言うけど、
いつまでそれを続けるの」
「続ける?」
「気づいてるくせに」
優斗さんは不敵な笑みを浮かべる。

空気が変わった
「いつかボロが出るよ」
「わかってます。
その時は隠さず話しますよ。」
「ギクシャクしちゃうんだろうな」
優斗さんは笑いながら言う
「あなた、いい性格していますね。」
「ありがとう」
「褒めてはいません」
優斗さんは微笑み
「アイドルの世界は競争なんだ」
「競争、」
「敵は少ない方がいいに越したことはない
芽吹く前のものを摘んでしまえば外に出ることも叶わない。
世間に注目されることもない。」
「何が言いたいんです」

冷や汗が流れる
「まだ君たちはデビュー前」
壁に追い詰められ肘ドンされる
「だから消えてもらおうと思って」
笑顔で言うことじゃない。
「俺はSTEPが最高の居場所だと思っている。
トップアイドル、STEPでいるために他の
アイドルを蹴落とす。
残酷だけど、これがアイドルの世界なんだ」
優斗さんは離れ私に背中を向ける。

「絆のないアイドルグループはすぐに
終わる」
「私たちにだって絆はあります。今はまだ細いくても、
どんどん太く固い絆になります」
「そんな夢物語みたいな」
優斗さんの言葉を遮る

「夢物語だっていいじゃないですか。
夢をみる、それはとても素敵なことだと思います。アイドルになりたい、
その夢を追いかけて私たちは出会った。
STEPの皆さんだってそうでしょ?アイドルになりたい。
その夢を追いかけて集った仲間でしょう?
優斗さんはこう言いました。
弱い自分を変えたい、
それはアイドルじゃなくてもよかったんじゃないんですか?
でもアイドルに感化されたからアイドルになった。
憧れは次の憧れを生みます。
あなたたちが憧れたアイドルがいたように少なくとも私はあなた達に憧れたんです」
息を呑むのがわかった

「それともトップアイドルでなければ簡単に切れるほどの絆なんですか」
「そんなわけ、」
「私たちはまだまだ未熟です。デビューライブをまだですが
いつかSTEPを、あなたたちを超える、そんなアイドルになってみせます」
私の揺らがない決意に優斗さんは息を吐く。

「純粋な決意を持った後輩たちを蹴落とそうなんて、俺はかなり馬鹿らしい、
ひと足先にいる先輩のすることじゃなかった、ごめんな。
優斗さんは微笑んで言ったがすぐに真剣な顔になる
「それは宣戦布告かな。いいよ、受けて立つ。
登ってきなよ、俺たちのいる場所まで。」
絶対に超えてみせる。

舞ちゃんが俺に会釈して部屋に戻ったのを確認してから
「これでよかったの」
「うん、上出来だ」
「日向、」

通話中にしておいたスマホを取り出す。
「いくら向上心だからってやりすぎじゃないかな。
それに僕、あんなキャラじゃないし」
「いや、かなり役にハマってたよ。」
「それは良かった」
「俺たちを超えるって言ってたな、
舞ちゃん」
俺の返しに日向が続く
「舞たちが、俺たちの場所まで登ってこれるか楽しみだ、」
翔の声が弾む。
僕と日向と翔は同室になった。多分この会話は日向と翔しか知らないだろうな、
(彼女達がどう成長するか楽しみだ)
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