虹色のバラが咲く場所は

256話 青春

ー回想ー
数時間前、事務所。
「類くんは佐々木さんについて行った。
あんな大手に誘われて、行かない人は
いないよ。
それに、大手じゃないこの事務所より
あそこならやりたいことも
存分にできるんじゃないかな」

「いえ、類は必ず戻ってきます。
今日が終わるまで待ってくれませんか?」

「雪希くん、
彼はみんなになにも言わなかった。
それは、自分の中で決まったから
言わなかったんじゃない?」

「それは違います。
類は、迷っているから言わなかったんだと思います。迷っていなかったら
はっきり私たちに言います。
類はそういう人です」

「類がいるから俺たちは輝けます。
他の誰でもない、類じゃないと
ダメなんです。」
(ほんと、この子達は)

「わかった、でも明日になったら
各方面に連絡するからね」
「「「はい!」」」

ー回想終了ー
「その後もみんな、何か類くんに
コンタクトしなかった。
ただ待ってただけ。
でも連絡があったらみんな飛び出して
いってさ。
見透かされてるよね、類くん」
その時を思い出すように七瀬さんは
クスクスと笑う。

「あれ、照れてる?」
「照れてませんよ。
そう見えてるだけです」
「ふーん」
七瀬さんの目を細めて笑った顔が
ウザい。

(類くん、顔真っ赤。図星かな。
いいなぁ、青春)

数日後、郵便受けの中に一つの
白い封筒。
(蒼葉 類様・・・っ)
他の郵便物も取って、テーブルの上に
おいて部屋に籠る。

(・・・見間違いじゃない、
楓さんからだ。)
留められているシールを丁寧に剥がす。

「こっちから2通連続で出しちゃって
ごめんね。でも待てなくて。
類くん、今度の三連休の初日に
うちの高校の学祭があるんだ。
よかったら来ない?
忙しいのはわかってる。
無理にとは言わないよ。
でもあるってことだけ伝えたくて。

それと、無理に返事を書こうなんて思わないでいいよ。もしかして前のやつ、
読んでないかな。近況だけで重要なことは書いてないから急いで読まなくて
大丈夫。

また伝えたいことができたら書くね。
楓」

封筒の中には、
スミレ女子高 3ー2たこ焼き当日無料券
が入っていた。

「・・・3年!?」
便箋には確かに高校と書いてある。
(てっきり、年下かと思ってた。
年上だったなんて!
何か失礼なことしてないよね)

「その時は謝ろう」
考えても意味がなくてやめた。

(文面も前回の簡素な感じじゃなくて
丁寧だ。落ち着いて本来の性格が
出てきたのかな)

封筒を机に置いて、一階に降りる。

「類、何かあった?
楽しそうだけど」
「雪希、なんでもないよ」

カレンダーはもう10月になっていた。
3連休は10月半ば。

「ねぇ、3連休の初日、
共通の仕事って入ってたっけ?」
「え、今のところ入ってないけど」
「そっか、」
「用事?」
「ちょっとね」
(類をあんなにウキウキさせるなんて
なんだろう)

翌日、打ち合わせ。
「それで大変申し訳ないんだけど予定を1日前倒しになっちゃうんだけど」
咄嗟にえ、と出そうになるのを堪える。
文化祭当日になってしまった。

「何か予定が、」
「いえ、大丈夫ですよ。
大した用事じゃないので」
(重要ってわけじゃない。
たかが学校祭。必ず行かないといけないことじゃない)

ー家ー
「舞、舞ってスミレの学祭に行く?」
「え?その予定だけど、類も行くの?」
「行く予定だったんだけど急に予定が入っちゃって。
舞、よかったら使って」
たこ焼き無料券を渡す。

「え、これどうしたの?」
「楓さんから渡されたんだけど無理だから」
「わ、分かった」
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