逆ハーレム戦隊 シャドウファイブ

19 ラストバトル

 レッドシャドウはコスモ銃を構える。この銃は空気中の微細な鉱物の成分を十分集める。その鉱物の成分が圧縮され弾となる。撃ち込まれた弾は身体を貫通せず、骨に留まり十倍の重さ約10キロほどとなり、敵の動きを緩慢にさせるのだ。
つまり10発撃ち込めば、敵は100キロの足枷を背負うことになる。

 ブルーシャドウは薄くて透けそうな刀を持っている。遠くから見るとただの美しい刀だが、良く見ると実は光の粒子で出来ている。あの有名な光の剣のように見えるかもしれないが、この刀で肉体を斬ることはない。
この光刀が斬るものは加工されたものだけで、主に怪人の武器を切り刻んできた。

 イエローシャドウの鞭は変幻自在で、ダメージを与えるよりも拘束の意味が大きい。四肢の自由を奪い、軽く力が抜ける程度の電流が流される。つかもうと思っても無駄だ。
バトルスーツを着ているもの以外は、ウナギのようにぬるぬると滑り、捕まえ続けるだけになるだろう。

 ホワイトシャドウは、敵の武器やアイテムを奪うようにブーメランを放つ。追撃機能がついたブーメランは一度かわされても、何か敵から取得するまで追い続けることだろう。

 グリーンシャドウの武器は言わずもがな肉体が武器だ。太極拳の達人でもある彼は、確実に相手のツボを押さえ、たちどころに戦意を失わせるだろう。肉体のエキスパートなのだ。

 そしてピンクシャドウの私はシールドを出して身を守っています。ですが攻撃にも使えることがわかりました。


 強化して野獣と化したブラックシャドウを取り囲む。

「見ろ! 興奮のせいで勃起しているが破れそうにない」
「くそー。さすが黒彦だな。スーツの内部も強化してやがる」
「いや。俺たちは毎日着るものだから、着心地を重視するとあの強度が限界だろう」
「しかし、でかい」
「ともかく動きを封じ込めよう。あのバーサーカー状態だと建物ごと破壊しかねない」
「よし!」

まずはレッドが銃を撃った。サイレント機能が付いているのでシュッと風を切る音だけが聞こえ、ブラックシャドウの太腿に弾がめり込む。足に撃ち込まれたことに気づき、ブラックシャドウはちらりと一瞥するが無視して両手を広げ「グウウウゥーッ!!!」と唸り声をあげる。

「うっ、耳が」
「マスクがないせいで音波耐性が!」

唸り声は超音波と衝撃波が混じりあい、メンバーの聴覚にダメージを与える。幸い私はマスクをかぶっているので耳をふさぐ必要はなかった。
それでも7発、レッドはブラックシャドウに弾を撃ち込む。しかし一向に動きは変わらず、ホワイトの両肩をガシッと掴んだ。

「く、くそっ、放せ!」

イエローがブラックシャドウの手首に鞭を巻き付け、引っ張るが、びくともしない。

「強化し過ぎだろ! 怪人の比じゃない!」

ホワイトをそのまま抱きしめ始めると、骨のきしむ音が聞こえてくる。
「くううっ、ううくうぅうっ!」

バトルスーツで守られてはいるが時間の問題だ。

「だめだ、斬れない」

ブルーが後ろから、ブラックシャドウのバトルスーツを切り刻もうとするがやはり、特殊な繊維で作られたバトルスーツには傷1つ付けられなかった。

「こうなったら肉弾戦しかない」

グリーンが躍り出ると、危機を悟ったのかブラックシャドウはホワイトを手放し、両手首を重ね合わせた。ブィーンと鈍い音がしたかと思うと、手首から手の甲、肘まで金属が覆った。

「こいつ! シールドまで!」
「しかもただのシールドじゃない!」

そう。シールドに見えたかと思ったが、実はガントレッドで防御もさることながら打撃にも適していそうだ。
ホワイトはあばらを押さえながら「何もかも上から上にいきやがって」と悔しそうな半面、嬉しそうにも呟いた。

「だめだ、銃は効果がない」

レッドがカチカチと引き金を引いていると、その隙をつきブラックシャドウは素早く大きく腕を振り、ラリアットをかました。

「うわぁああっ!」

とっさにガードしたが、吹き飛ばされ壁に当たってしまう。

「レッド!」

私はホワイトの側からレッドに駆け寄る。

「う、く、だ、大丈夫だ」
「よかった」
「それよりも、ピンク。君は逃げるんだ。ここに居ては危険だ」
「え、そんな。嫌です。私だってメンバーです!」

レッドに逃げるように言われたが私にはできない。そうやり取りしていると、ブルーもイエローも投げ飛ばされ、武器も奪われていた。

 ブラックシャドウに捕まると不利だと考え、グリーンは以前ムキムキ怪人との戦いで見せた『手四つの力比べ』は避け、蹴りと打撃で応戦している。
グリーンの攻めをブラックシャドウは全てガントレッドで受け止め、ダメージを逃がす。

 イエローがブルーに肩を貸し、グリーンとブラックシャドウの戦っているそばから離れ、二人の激闘を見守る。膠着状態であったがグリーンに疲労の色が見え始める。

「だめだ。本来はグリーンが圧倒的なのに」
「だけど俺たちの中でグリーンの次に太極拳をマスターしてたからな」

どうやらメンバー全員とブラックシャドウも太極拳を習っていたようだ。さっき受けた技は発勁だろうか。
グリーンの疲労がたまり、、ブラックシャドウにどんどん後退させられ、次にブルーが交代する。

「俺が相手だ」

回転して飛び込んだブルーは、素早さでブラックシャドウに次々と手刀を打つ。ブルーの猛攻に少し後ろに下がるブラックシャドウだが、防御に徹し体力を回復させたのち、力任せの体当たりでブルーを吹っ飛ばした。

「ぐっ!」

次にイエローが連続の蹴りを放つ。段々とシャドウファイブの攻撃が優勢になってきた。ブラックシャドウのスピードが落ち始め、ガードも甘くなってきている。もう少しで倒せるのではないかと言うところでブラックシャドウに異変が起きる。

「あの、ブラックシャドウがまた大きくなっていませんか?」
「ん? 確かにもう一回り大きくなったかもしれない」
「やばいな。ドーピングのせいで暴走してるんじゃないのか」

ムキムキ怪人はオーバーヒートによって敗れた。あの時は段々と身体がしぼんでいったが、ブラックシャドウは逆に膨張している。しかも発熱しているのだろうか。水蒸気のようなものが身体から出始めている。

「まずい。やりすぎると命を奪ってしまう」
「え? 死んじゃうんですか?」
「俺たちはあいつを殺したいわけじゃない!」

このままではブラックシャドウの命が燃え尽きてしまうかもしれない。彼を倒すつもりではあるが、この戦いを終わらせ元に戻って欲しいだけなのだ。

「くそっ、どうしたら」

ブラックシャドウを拘束し、身動きをとれないようにしたいが、それも叶わない。体力を奪い、消耗させることに時間がかかりすぎている。
私もどうしたらいいんだろうと戦いを見守っていると、視界にブラックシャドウの破れた黒衣が目に入った。

「あ、もしかしたら」

素早く黒衣を拾い上げポケットを探る。

「あった!」

私はポケットから小瓶を取り出した。

「それは?」
「さっき解毒剤くれたんです。催淫剤の。これがきっとそうです。同じ瓶だし」
「そうだったのか」
「これを飲ませることが出来たら、なんとか暴走を止められるかも」
「確かに!」

それで問題はどうやって飲ませるかだ。当たり前だけど小瓶を渡しても飲まないだろう。無理やり飲ませるにしても難しい。

「うーん。押さえつけるとして」
「難しいな……」

非常に困難だ。でも私は決心をメンバーに話す。

「あの、私が口移しで飲ませます。だから皆さんでブラックシャドウを取り押さえてもらえないでしょうか」
「え? ピンクが?」
「危険だ!」
「でも、私の力じゃそれくらいしかできないし」
「むうっ」

解毒剤を飲ませる役は私が一番適任だと思った。時間も少ないため、メンバーも渋々この提案に乗ってくれた。

「よし。じゃあピンクに任せる。だけど、上手くいかなかったら、飲ませようと粘らずにすぐに奴から離れるんだよ?」
「わかりました」
「みんな。いいか?」
「オッケーだ」
「よし!」

イエローが消耗し始め、最後の蹴りを放つ頃、残りのメンバーで一斉にブラックシャドウを取り押させる。とにかく手足を固めた。
そして私はブラックシャドウの胸に飛び込み、口に含んだ解毒剤を口移しで飲ませる。

「ムウウッ! グウウッ!」
「んっ、んっ、ふっ!」

勢いよく吹き出すように、ブラックシャドウの口の中へ解毒剤を入れ、何とか飲ませることが出来た。

「すぐに離れろ!」
「はい!」

メンバーみんなでブラックシャドウから遠ざかる。ものの数秒ほどで、ブラックシャドウは胸を押さえ悶え始めた。

「グウウッ、ウウウッ」

四つん這いになったブラックシャドウは、段々と身体が小さくなってきた。

「やった。成功か?」
「元に戻ってるのか」

やがて元通りの体格に戻りブラックシャドウはごろりと仰向けになった。レッドが近づきブラックシャドウに話しかける。

「平気か?」

ブラックシャドウは視線だけをレッドに寄こし、静かに笑んだ。

「お別れだ……」
「え?」
「もう俺の身体はもたない」
「何を言ってるんだ。解毒剤飲んだだろ」
「2本のドーピングは無理があった。1本じゃ無理だ」
「じゃあなんでそんなことしたんだよ!」

シャドウファイブに囲まれてブラックシャドウは静かに話す。

「寂しかったんだ。最後にぱーっと賑やかにやってから死にたかった」
「ばかやろう!」

どうしよう。私のせいだ。私が解毒剤3本も飲んだから!

「ごめんなさい! 私のせいです! 何でもしますから! お願い! 死なないで!」

ブラックシャドウの胸にすがりつき、叫ぶ私の頭を彼は優しく撫でる。

「俺はフェミニスト、だか、らな……」

頭に乗せられていた手がするっと地面に落ちた。

「!!!」
「黒彦!!!!」
「やだああああーーーーー!!!!」

静かな廃墟に私の号泣する声が響き渡った。
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