クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 個室まであるのにどうしてわざわざ? と、考えてから、ひとつの可能性に思い至る。

「私も着替えたらここに来ていい?」

「……ああ」

 本当にわずかだけど、透哉さんの口もとが緩んだような気がした。

 いや、そうだと思いたくて幻覚を見ているのかも。自分が見たものをいまいち信じられなくて、質問が正しかったかどうかわからなくなる。

 ──透哉さんは、わざわざ私が隣に来やすいシートを選んだのかな。それとも違うのかな。

 そうだったらいいなんて、契約結婚を承諾した私が思っていい事じゃないかもしれないけれど、彼に感じていた寂しさに似た感情は薄れたような気がした。



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