クールな御曹司との契約結婚は、初夜から愛と熱情に満ち溢れていました
 水の中を軽く跳ねながら前へ進み、浮き輪遊びを優雅に楽しむ人々のもとへ向かおうとした。

「気を付けろ。君の身長ではすぐに届かなくなる」

「え? なに──」

 周囲で聞こえるはしゃぎ声に、彼の低い声が紛れる。

 聞き返そうとした瞬間、不意に右脚がくっと引きつった。

 攣った──と無意識に脚を庇いかけて、つい身体をくの字に折り曲げる。

 プールの中でそんな事をすれば、当然顔が水につく。突然の事でパニックになった私は、うっかり胸いっぱいに水を吸い込んでしまった。

「七海!」

 初めて名前を呼ばれたような、と他人事のように思ったのと同時に、力強い腕で引き上げられる。

「大丈夫か?」
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