激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「俺はこれからアメリカにたつ。離れている間に昔の男に言い寄られて、日菜子の心が揺らぐんじゃないかと心配だったんだ」

 真剣なまなざしを向けられ、心臓が大きく跳ねる。

「たとえ一瞬でも君がほかの男に心を奪われるのは許せないから」

 待って、と心の中でつぶやく。
 こんなふうに熱く見つめられたら、勘違いしてしまいそうになる。

 私たちの間には、恋愛感情はない。お互いの利害のために契約結婚をしただけなのに……。

「亮一さん……」

 戸惑いながら名前を呼ぶと、彼が目もとを緩めた。

「悪い。余裕がなさすぎるな」

「いえ」と私も平静を装い首を横に振る。

「元カレとは極力関わらないようにしますし、相手も私なんかと話したくないでしょうから、大丈夫ですよ」
「それならいいんだが。気をつけろよ」

 彼から念を押され「はい」とうなずく。

「そういえば亮一さん。飛行機の時間は大丈夫ですか?」
「実はかなりギリギリだ」

 亮一さんが乗る予定の便の出発時間を聞いて跳び上がる。
 いくら旅慣れた亮一さんとはいえ、もうあまり余裕がない。

「は、早く空港に向かってください!」

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