激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 今朝、『仕事が長引いている』とメッセージが届いたけれど、きっとそれも嘘だろう。
 
 亮一さんは怜奈さんと一緒にいるんだ。兄が来るとわかっているのに帰ってこないほど、彼女と離れがたいんだろうか。

 そう思うと、胸が引き裂かれるように痛んだ。

「夕食までには帰ってきてくれると思うんだけど」
「そんなに忙しいなんて、日菜子ちゃんも寂しいわね」
「日菜子。亮一に愛想をつかしたら、いつでも日本に帰って来ていいからな!」

 相変わらず過保護な兄に、苦笑いして話をそらす。

「そうだ。今日の夕食はレストランに行こうと思うの。お兄ちゃんと早苗さんはなにが食べたい?」
「どんなレストランがあるの?」

 レストランが紹介された雑誌を手渡すと、ふたりとも興味津々でのぞきこむ。

 本当は自宅でふたりをもてなすつもりだったけれど、具合が悪くて料理の下準備ができなかった。

 楽しそうにレストランを選ぶふたりを見ながら、そっとおなかに手を当てた。



 昨日はあれから近くのドラッグストアへ行き妊娠検査薬を買った。

 覚悟を決めて検査をすると、予想通り陽性。
 妊娠しているという結果が出た。

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