激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 動揺しながら自分のおなかに触れる。

 一カ月前、薬で理性を無くした亮一さんに激しく抱かれた。

 あの夜はふたりとも余裕がなかった。
 一応避妊具を使ってくれた記憶はあるけれど、きちんと避妊できていたかどうかは怪しい。

 予想外のことに頭が真っ白になる。

 優しい亮一さんのことだ。
 私が妊娠していると知ったら、彼は自分を責めるだろう。
 そして子どもの父親として、責任を取ろうとするかもしれない。

 自分の気持ちを押し殺して。


 彼が本当に愛しているのは、私ではなく怜奈さんなのに。



 私たちの間には恋愛感情はない、お互いの利害のためだけの契約結婚なのに……。









「素敵な部屋ね! 周りの環境もよさそうだし」

 リビングを見回して明るく言うのは、日本から遊びに来てくれた早苗さんだ。
 兄は彼女のうしろを歩きながら「まぁまぁじゃないか?」なんて素直じゃない感想を漏らす。

「で、亮一はどうしたんだ」

 兄にたずねられ、私は胸が痛むのを感じながら微笑む。

「お仕事が忙しいみたいで」

 亮一さんは昨日から帰ってきていなかった。

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