激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 遠い国にいる両親のもとにかけつけられないもどかしさ。
 はっきりとした安否もわからないまま過ごした不安な夜。

 そして、亡くなったと伝えられたときの絶望感。


 感情がめまぐるしく揺さぶられ疲弊した中で、身元の確認の依頼や遺体の搬送の手続きをしなければならなかった。

 もし私が外交官になり、万が一海外赴任中に外国で亡くなるようなことになれば、また兄に同じような思いをさせることになるんだ。

 そう考えると、外交官を目指すとはとても言えなかった。

 けれど、海外への憧れを捨てきることもできず、複雑な気持ちで挑んだ就職活動は失敗続きだった。

 結局契約社員として働いていたけれど、その仕事も来月には辞めることになってしまった。

 どこまでも中途半端な自分がなさけなくなる。


「本当に。日菜子ちゃんはお人よしだし、彰は過剰なくらい心配性だし……」

 私の話を聞いた亮一さんは大きくため息をついた。

「この様子じゃ、婚約破棄されたことを正直に話したら彰は大激怒するだろうな」
「そう、ですよね」

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