激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「もともと過保護だった彰は、ご両親が海外で亡くなってさらに心配性になった。外交官になれば、治安の悪い国や地域に赴任することもある。日菜子ちゃんがそんな職につくことを許すはずがない」
「はっきりダメだと言われたわけじゃないんです。ただ、私がこれ以上兄を心配させたくないと思って……」
「それで夢をあきらめた?」

 亮一さんの問いかけに無言でうつむいた。



 小さなころから海外で暮らすことに憧れていた。

 まだ小学校に上がる前のころ。
 兄の部屋にあった地球儀をのぞいて、私は日本の小ささに驚いた。

 それまで自分が暮らすこの国が世界のすべてだと思っていたのに、世界はこんなにも広いんだと知り、衝撃を受けると同時にものすごくわくわくした。

 広い海の向こうの国では、日本とは言葉も文化も景色も違う。
 様々な人種の人が暮らしている。

 最初は漠然とした外国への憧れを抱いていただけだったけれど、亮一さんが外交官を目指していると知りその思いは強くなり明確な夢になった。


 でも……。


 両親が海外で亡くなったときのことを考えて肩を落とす。

 事故の連絡を受けた瞬間の衝撃。
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