激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 そこまで気遣ってくれるなんて、部長のほうこそお人よしだ。

「いえ、大丈夫です」と苦笑しながら首を横に振った。

 私は社内恋愛をしていた。
 相手は私より三つ年上の先輩、内藤康介。

 彼と付き合っていることを内緒にしているわけじゃないけれど、部長にまで知られているんだと知ってちょっと恥ずかしくなる。
 
 きっかけは一年前。
 営業をしている彼から翻訳を頼まれた書類に、電話番号が書かれた付箋が貼られていた。

 社交的な彼は誰とでも気軽に話すタイプで、私にもよく声をかけてくれた。
 仕事中に世間話をしたり、ちょっとした愚痴を言い合ったり。
 話しやすい先輩だなと思っていた。
 
 それまで恋愛経験がなかった私は、こんなふうに異性からアプローチされたのははじめてで、付箋を見たときはとても驚いた。

 どうしていいのかわからず戸惑っていると、次の日仕事を終え会社を出た私を彼が待っていた。

『連絡くれるのを待ちきれなかった』と照れながら言われ、彼の遊びなれた雰囲気とのギャップに好感を持った。

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