激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「どうして?」
「結婚って好きな人同士がするものじゃないですか」

 私の言葉を聞いた亮一さんは、ぷっと噴き出した。

「日菜子ちゃん、かわいいね」

 甘い視線を向けられて、頬が熱くなる。

 ものすごく子どもっぽいことを言ってしまったと気づき、恥ずかしくなる。

「俺は日菜子ちゃんが好きだよ」

 その言葉にドキッとしたけれど、必死に冷静になろうと深呼吸をする。
 亮一さんの『好き』は、妹や家族に向けての好きだ。恋愛感情ではない。

「それに、お互いの利害や条件を重視して結婚するのは珍しくない」

 たしかに、今はお見合いパーティーやマッチングアプリなんかを使って、お互いの条件や好みを知ったうえで結婚相手を探す方法が増えている。

「じゃあ、亮一さんにもなにかメリットがあるんですか?」

 私の問いかけに亮一さんはうなずいた。

「俺はあと二年はアメリカ赴任が続く。できればその間アメリカに来て、妻として一緒に暮らしてほしい」
「私がアメリカに……?」
「あぁ。アメリカに来るのは今の会社の雇用契約が切れる一カ月後からでいい。日菜子ちゃんは英語が堪能だから生活には問題ないだろ」
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