激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~

 こんなにかっこよくて有能な彼に、恋人がいないはずがない。
 私がそう主張すると、亮一さんは小さく肩を上げた。

「いないよ。残念だけど」
「嘘。たまたま別れたばかりとか……?」
「いや、外務省に入省してからまったく」

 彼が入省してからということは、七年間も彼女がいないの?

 こんな魅力的な男の人を、女性が放っておくとは思えないのに。

「亮一さんは彼女をつくらない主義なんですか?」
「外交官は忙しいし年単位で海外に赴任する。仕事に集中していたら、あっという間に七年がたっていただけだ」

 たしかに、普通の会社員とは違って頻繁に海外に行かなくてはならない外交官は、女性とお付き合いするのは大変なのかもしれない。

「彰には元カレに裏切られたことは話さず、結婚の約束をしていた相手は俺だってことにしよう」
「兄を騙すんですか?」
「正直に話して彰の心配性を悪化させるのと、嘘をついて安心させるのとではどちらがいい?」
「それは……」と口ごもる。

 そのふたつから選べと言われたら、圧倒的に後者だけど……。

「でも、私たちは付き合ってもいないのに、結婚するなんておかしいと思います」
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