激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 早苗さんの予想を聞いて、「ひっ」と悲鳴をもらしてしまった。

 契約結婚のために百万円以上する指輪をぽんと買うなんて、嘘でしょう……?

 おそるおそる亮一さんを見ると、彼は穏やかに微笑むだけだった。
 否定しないということは、早苗さんの予想は当たっているんだろう。

 私は自分の左手を見下ろし、緊張でごくりとのどを鳴らした。
 そんな私の様子を見て、早苗さんが首をかしげる。

「もしかして、日菜子ちゃんこの指輪の値段知らなかったの?」
「ね、値段は見ずに選んでって言われたから……」
「高級ブランド店で値段を気にせずお買い物させてくれるなんて、さすがエリート外交官ね」

 はしゃぐ早苗さんを見ながら、亮一さんに耳打ちする。

「すみません亮一さん。こんな高価なものを……」
「いや。日菜子ちゃんがよろこんでくれるなら、安いくらいだよ」

 さらりと言われ心臓が跳ねた。頬が熱くなる。
 きっと顔が真っ赤になっているに違いない。

 その様子を見ていた兄が、険しい表情で口を開いた。

「……なぁ。結婚したいって言うわりには、他人行儀じゃないか?」

 その言葉に、ぎくっと肩が震える。

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