激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「そ、そんなこと……」
「だって日菜子ちゃんって呼び方も昔のままだし、日菜子なんて亮一に対して敬語だし。妙によそよそしい」

 さすがお兄ちゃん……。と冷や汗をかく。

 焦る私とは対照的に、亮一さんはまったく動じなかった。

「今は彰の前だから、気を使っているだけだ」

 平然とそう言い、「いつもはもっとイチャイチャしてるよな、日菜子」と私に笑いかける。

 はじめて名前を呼び捨てにされ、心臓がきゅんっと音をたてた。

「俺に名前を呼ばれただけで、真っ赤になるなんて。日菜子は本当にかわいいな」

 甘い声で言われ、頭に血が上る。

「だ、だって……っ」

 慣れてないから、とは言えずに口ごもる。
 その動揺を楽しむように、亮一さんが私の耳もとでたずねる。

「だって、なに?」
「ええと」
「どうして赤くなっているか、教えて?」
「それは……っ」

 私は必死に取り繕うとしているのに、彼はわざと追い詰めてくる。

 お願いだからもう許して、と思いながら眉毛を下げて見つめても、彼は追及をやめてくれなかった。

「ほら」と色っぽい視線で見つめられ、私は覚悟を決めて口を開く。

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