激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「でも、正直に言ったら日菜子に嫌われるんじゃないかと思って怖かったんだ」
「たったひとりのお兄ちゃんなんだから、嫌うわけないよ」

 私がそう言うと、兄は目をうるませた。

「日菜子ちゃんはもう立派な大人なんだから、心配しなくても大丈夫よ」

 兄の隣に座る早苗さんが、優しくそう言って肩を叩く。

「それに、こんなに頼もしい旦那様もいてくれるわけだし」

 早苗さんの視線が亮一さんに向けられると、兄の顔がとたんに不機嫌になった。

「頼もしい旦那さまって、俺はまだふたりの結婚を許したわけじゃないからな!」
「それならそれでいい。婚姻は当人同士の合意があれば成立するんだ。シスコンの兄の許可は別に必要ない」

 亮一さんにしれっとあしらわれた兄は、「俺はシスコンじゃない……!」と顔を真っ赤にする。

「日菜子、本当にこんな男と結婚するのか? こいつ、優し気な顔をしてるけど本性はひどい男だぞ!」
「わぁ、妹の恋人を貶すなんて最低ね。そもそも妹が心配すぎて自分が結婚できない男なんて、シスコン以外のなにものでもないじゃない」

 早苗さんに切り捨てられ、兄は情けなく眉を下げた。

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