囚われのシンデレラ【完結】
父が主導で何かをしたのなら、側近である遥人の父親は必ず何かを知っているはずだ。有能な側近だからこそ、記録をすべて残しているに違いない。間違いなく、父親の他に真実を知るのは遥人の父親だ。
遥人のマンションの前に立つ。
もう、自分の中に何の躊躇いももたないことに決めた。正直、遥人からどう正確な情報を引き出せるか自信はなかった。でも、遥人を避けては通れない。どんなものでも利用する覚悟でいる。
インターホンを押すも、応答はなかった。
いないのか――。
おもむろにドアノブを手にする。そのドアを引くとドアが開いた。
玄関へと足を踏み入れると、薄暗い廊下の先に、窓の向こうの月明かりと思われる程度の光が差し込んでいる。
「遥人、いるのか?」
答えはない。
勝手に部屋に上がり込み、廊下を進む。ここに来たことはない。手探りのような感覚で行き着いた部屋にベッドがあった。
「遥人――」
明かりの点いていないその部屋に、ベッドにもたれて座る姿が視界に入った。その光景に、足が止まる。
「遥人――何してるんだ……!」
でも次の瞬間、反射的に身体が動いていた。
「バカなことはやめろ!」
手首にかざしていた刃物を勢いよく振り払った。
「……佳孝」
今、俺に気付いたかのように、のろりと顔を上げた。朝よりもずっと腫れていて、いつもの綺麗な顔立ちは見る影もない。
「どうして、こんなところに来た。僕の顔なんて二度と見たくないんじゃないのか」
「死のうとしたのか。ふざけるな!」
どこにも力が入っていない、そのふにゃりとした身体を掴み上げた。
「勝手なことはさせない。おまえは、死ぬ資格もないんだよ」
「死ぬ、か……。ああ、そうだよ。さっきから死にたくてたまらないのに、なかなか死ねないんだ。バカだよな。いざとなったらできないなんて――」
笑おうとしながら、顔が痛むのか上手く笑えないでいる。そんな姿の遥人を見ていたら、たまらなく腹が立った。
「死のうと思うようなことを、なぜしたんだ。おまえは、一体、何がしたかったんだ!」
理屈ではない感情が自分の中でとぐろを巻く。
「どうして、俺を裏切った」
「……おまえのことが、死ぬほど、好きだったからさ」
何と、言った……?
弱々しく響く、遥人から発せられた言葉の意味が分からない。