1000年後の約束をしよう
花火と思い出
二月二十八日。午前四時過ぎ。高校三年生である宮野旬(みやのしゅん)は、起床にはかなり早い時間に目を覚ました。

寝る前に充電器に差し込んだスマホを手に取ると、日付けが表示される。何度見ても二月二十八日と出る画面に、旬はため息を吐いた。

旬の部屋の壁にかけられているカレンダーは、七月からずっと捲られていない。捲ることが怖いのだ。未来へと歩いて行くのがただ怖い。

「……」

旬はゆっくりとベッドから出ると、高校の制服に袖を通す。深緑のチェックが綺麗なズボンとネクタイ、そして紺色のセーターの上に同じく紺色のブレザーを羽織り、その上からコートを着てマフラーも巻く。

「明日で最後か……」

制服を着た自分を鏡で見た時、鏡の中の自分はどこか泣き出しそうになっていた。そう、明日は旬たち三年生の卒業式がある。他愛もない話を仲間と当たり前のようにしていた日々が終わりを迎えるのだ。

旬はゆっくりと歩き、大きく息を吐いた後、ずっと捲っていなかったカレンダーを少しだけ捲る。最後にみんなと笑い合えるように、覚悟を決められるように、勇気を出せるように、そんなことを考えながら捲った。
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