1000年後の約束をしよう
浅井香穂
あたしね、ずっと劣等生なところがコンプレックスだった。周りは勉強が得意だったり、運動が得意だったり、絵や音楽の才能があったりするのに、あたしだけは何にもないから。

「優しいね」とか「真面目だね」って人から言われたこともあったけど、嬉しくなかったんだ。それしか取り柄がないみたいだし、人に優しくて真面目なところに価値ってあるの?あたしはこの世界に必要とされてるの?ってそんなことばっかり考えてた。……あそ部に入部するまではね。

高校に入ったら、ムードメーカーで運動が得意な旬がいて、クールでしっかり者で勉強が得意な新がいて、可愛くてみんなのアイドル的存在で裁縫が得意な真奈がいて、高校に入学してしばらくは劣等感の塊だった。

毎日俯いてばっかりだったけど、ノートを取ってたら真奈に言われたの。「字がすごく綺麗だね」って。「私の字、汚いから羨ましい」って。

旬や新もあたしの字を誉めてくれたよね。その瞬間ね、単純だけど期待だけ大きくなってうまくできなくて絶望した日とか、笑いながら泣いたこととかが全部、救われたような気がしたの。

みんなとは、百歳のおじいちゃんおばあちゃんになっても会って思い出をこうやって話したいし、感謝の言葉も伝えたいな。

あたしを救ってくれて、ありがとう。
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